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『四十七人の刺客』 2019年「決算!忠臣蔵」公開ということで… 変わり種忠臣蔵映画 その1

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1994年10月22日 公開

配給

東宝

原作

池宮彰一郎

監督

市川崑

脚本

池上金男池宮彰一郎の脚本家としてのペンネーム)、竹山洋市川崑

キャスト

高倉健中井貴一宮沢りえ岩城滉一、宇崎竜童、黒木瞳西村晃森繁久彌

 

 

内容紹介

大石内蔵助と吉良・上杉側の司令塔、色部又四郎との謀略戦争を軸に、内蔵助の人間像を追いつつ新しい視点で描いた忠臣蔵映画。従来の″忠臣蔵″の物語に、現代的な情報戦争、経済戦争の視点を当て実証的に描きベストセラーとなった池宮彰一郎の小説の映画化で、監督は「帰ってきた木枯し紋次郎」の市川崑。脚本は池上金男池宮彰一郎の脚本家としてのペンネーム)と市川、竹山洋の共同、撮影は五十畑幸勇が担当。(映画.comより)

 

 

感想

忠臣蔵について一から説明するとキリがないのでここでは簡単な説明とさせていただく。

忠臣蔵の原作は江戸時代元禄に実際にあった赤穂事件をもとにした人形浄瑠璃、歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』。なおこの作品では事件の起きた時代や人物を別のものに置き換えている。江戸時代の元禄、江戸城松の廊下で赤穂藩藩主浅野内匠頭高家肝煎吉良上野介に斬りつけた刃傷事件が起きた。幕府は内匠頭を一方的に断罪し切腹、吉良はお咎めなしだった。その報せを聞いた赤穂藩国家老大石内蔵助は幕府に追従するフリをしながら志をともにする同士(いわゆる四十七士)とともに主君の無念を晴らすために吉良邸討ち入りを計画し、実行。幕府や吉良の後ろ盾上杉家の厳重な警戒網をくぐり抜け見事吉良を討ちとる。

 

以上が非常に簡単な忠臣蔵の説明だ。忠臣蔵は実際の事件をもとにしたフィクションで様々な見せ場が盛り込まれている。忠臣蔵モノは戦前主君のために吉良を討つ「忠君愛国」を描いていたが、戦後の作品は一方的な手打ちをした幕府への「体制批判」の色が強い内容が多い。今に至るまで忠臣蔵はさまざまな手を加えられ、色々な作品が生まれている。

いきなり変わり種忠臣蔵を紹介するのも申し訳ないので正当派忠臣蔵を2本紹介する。

1956年公開 東映の「赤穂浪士 天の巻・地の巻」1985年日本テレビで放送されたドラマ「忠臣蔵がいいだろう。とにかく見せ場たっぷりの泣かせる忠臣蔵でいわゆる忠臣蔵とはどういったものか楽しく知ることができる。

 

ここでようやく『四十七人の刺客』の紹介に入るが大体の忠臣蔵ものでは吉良の浅野内匠頭に対するひどい仕打ちが描かれ、四十七士たちが吉良を討つに足りる大義名分が描かれる。このシーンがあることで見ている側はラストの討ち入りにカタルシスを感じる。ところがこの映画では松の廊下のシーンは一切描かれない。浅野内匠頭が吉良に斬りつけた理由も明らかにされない。内匠頭は切腹、吉良はお咎めなしの裁定が下される。そして赤穂藩の取り潰しが決まる。

吉良びいきの裁定だが浅野内匠頭がとんでもない失態を犯したとも考えられるし、真実は吉良以外わからない。

高倉健演じる大石はたったこれだけの情報しかない中、特に真実に固執せず躊躇なく吉良の後ろ盾柳沢、上杉両家の面目を潰す目的で吉良邸討ち入りを即決する。大石を演じる高倉健のいつもの寡黙で堂々と構えた姿が頼もしい一方、容赦のない冷酷さも感じる。

ここから大石と上杉の江戸家老色部又四郎との権謀術数を用いた情報戦が展開される。色部を演じるのは中井貴一。大石同様ポーカーフェイスの策士を演じている。大石たち赤穂浪士は吉良の悪評を流布し、市井に反吉良の感情を植え付けたりとえげつない策を使う。大石の指図でマシーンの如くこれらの作戦を実行する赤穂浪士たちも不気味だ。

いよいよ終盤吉良邸に討ち入り、激戦を繰り広げ、大石は吉良と対峙する。ここで大石は吉良と言葉を交わすが衝撃の一言を言い放つ。

吉良邸討ち入りには武士として生きる大石が描かれる

 

 冷徹な情報戦が見どころの一方、もう一つの見どころは大石と女たちとの関係だ。

ここでは一人の男として大石が描かれている

高倉健演じる大石。なんと浅丘ルリ子黒木瞳宮沢りえ3人も愛する女がいる。本妻が浅丘ルリ子黒木瞳は昔からの女、そして宮沢りえは吉良邸討ち入りを計画している最中に恋に落ちる女だ。武士が妻と妾を持つことを自然に描いた作品は少ない。大石は3人のうち誰かを蔑ろにしていることはなく、皆それぞれに愛情を注いでいる。

物語終盤討ち入り前に大石は宮沢りえ演じるかるとの間に子ができる。

死を覚悟した討ち入り前に、情報戦の真っ最中に3人の女への行き届いた配慮さらに子までつくるとは高倉大石、不器用どころかとんでもなく器用な男である。

 

雰囲気が全く違う謀略のドラマに男女のドラマを取ってつけた感も否めないがそのアンバランスさ、不自然さに不思議な感覚を覚え、楽しむことができた。

 

今作はDVD以外にamazonamazonプライムビデオではない)、U-NEXTの配信でも見ることができます。