『将軍家光の乱心 激突』 「多十郎殉愛記」公開 中島貞夫の時代劇 その4
1989年1月14日 公開
配給
原作
監督
脚本
キャスト
緒形拳、千葉真一、松方弘樹、丹波哲郎、長門裕之、二宮さよ子、京本政樹、織田裕二ほか
あらすじ
将軍継承に絡み我が子・竹千代を殺そうとする徳川家光と、それを守ろうとする藩士達との攻防を描く。原作・脚本は「姐御(1988)」の中島貞夫と「花園の迷宮」の松田寛夫が共同で執筆。監督は「別れぬ理由」の降旗康男、撮影は「恐怖のヤッチャン」の北坂清がそれぞれ担当。主題歌は、THE ALFEE(「FAITH OF LOVE」)。
感想
今作は中島貞夫の監督作ではないが、個人的に中島貞夫の時代劇から外せない一本だ。
チャンバラ映画が失われつつある時代に1978年に『柳生一族の陰謀』が、1981年に『魔界転生』という大型時代劇が公開された。映画界でチャンバラ映画が失われつつある時代に立て続けに公開されたこの2作は血沸き肉躍る活劇にあふれていた。そして両作に主演した千葉真一が萬屋錦之助、若山富三郎という時代劇スターに負けない素晴らしい演技、アクションを披露した。
時代劇が、チャンバラが映画界に戻きたと思ったのもつかの間、これに続けと言ったチャンバラ映画が現れないまま8年が経過し、とうとう1989年に今作が公開された。
こうした文脈を踏まえて見ると今作をただのチャンバラ映画としてみることはできない。
今作の見どころは竹千代を守るの凄腕の傭兵たちと家光の命により竹千代を狙う忍者たちが繰り広げるチャンバラに次ぐチャンバラの大活劇だ。
傭兵のリーダーは緒形拳、忍者のリーダーは千葉真一。千葉は出演だけでなくアクション監督として彼が率いる超絶アクション集団ジャパンアクションクラブ(JAC)とともに存分にアクションをみせてくれる。
物語冒頭から怒涛のアクションの連続だ。山奥で湯あみをしている竹千代を狙って家光の刺客が押し寄せてくる。矢の雨が降り注ぎ、次々と竹千代の側近がやられていく。その時緒形拳たち傭兵が木からロープで飛んで助けに現れる。縦横無尽に展開されるアクションにいきなり度肝を抜かれる。
何とか生き延びた竹千代だが家光から元服式をとり行うということで江戸城に来いとの命令が下る。明らかな罠だが竹千代一行は家光の刺客との死闘を覚悟し、江戸城へ向かう。緒形拳率いる傭兵集団の面々も個性的で面白い。中国武術使い、爆弾使い、鞭使いが忍者、侍と死闘を繰り広げる。爆弾使いを演じるのは若かりし織田裕二だ。
途中千葉真一たち刺客の罠を様々な戦略でくぐり抜けていった竹千代一行だがとうとう戦いを避けられない状況になる。THE ALFEEの歌がガンガンかかる中で忍者たちとのすさまじい馬上戦が始まる。馬から馬へ飛び移る、馬からバンバン落馬するといった大スタントの連続だ。傭兵たちは死闘の中、一人また一人と命を落としていく。その死に様までも凄まじい。敵を巻き込んだ自爆、自らの体に油をかけ火をまとい敵に組みついて焼死。死でさえも大活劇といて描いている。
集団戦のダイナミックさに圧倒されるが1対1はどうなのか。決闘シーンもまた素晴らしい。終盤宿場町で緒形拳と千葉真一の決闘が展開される。この決闘が凄い。刀と刀のアクション。体と体をぶつけ合い、組み打つ肉弾戦。家屋をブチ破り、建物の内外を縦横無尽に駆け回るアクション。1対1でこれだけ多彩で密度のある立ち回りを繰り広げる。
消えゆく大活劇チャンバラ映画に新しい息吹を与え、よみがえらせた降旗康男、千葉真一、松田寛夫らと、そして中島貞夫。
その中島貞夫が手掛ける「多十郎殉愛記」が2019年4月12日に公開される。堂々「ちゃんばら映画」と宣言する今作が非常に楽しみだ。