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『木枯し紋次郎』 「多十郎殉愛記」公開 中島貞夫の時代劇 その1

1972年6月21日 公開

配給

東映

原作 

笹沢左保

監督 

中島貞夫

脚本

山田隆之、中島貞夫

キャスト

 菅原文太伊吹吾郎、山本麟一、渡瀬恒彦江波杏子小池朝雄ほか

 

 

あらすじ

“あっしには、かかわりのねえことでござんす"の名台詞でお馴染み、笹沢左保原作「木枯し紋次郎」。
菅原文太主演、鬼才・中島貞夫監督による本作品は、友人の身代わりとなって三宅島の流人となった紋次郎が、新たに流されてきた男の口から裏切られたことを知り、島抜けして復讐を果たすストーリー。
三宅島の大噴火、暴風雨をついての海上脱出シーンなど、映画ならではの大スケールで描き上げた文太版・木枯し紋次郎! ニヒルな魅力が全編に冴え渡る痛快娯楽作!!(amazon 内容紹介参照)

 

 

感想

1972年1月からスタートして人気を得たドラマ版にあやかり、なんと同じ年に作られた本作。ドラマ版は言わずもがなの傑作だが、映画版も傑作だ。

 

物語冒頭、菅原文太演じる紋次郎は小池朝雄演じる兄貴分の左文治のもとに身を寄せ江波杏子演じるお夕という女とも心を通わせるようになる。ある日お夕が地元の貸元に手ごめにされかけ、左文治がお夕を助けるために貸元を斬り殺してしまう。紋次郎は死期の近い母を持つ左文治の身代わりに罪を被る。左文治は母を看取ったら必ず自首すると紋次郎に約束する。

 

物語のさわりについて説明したが、少しでもドラマ版の木枯し紋次郎を見たことがある人は疑問に思うはずだ。「あっしには関わりのねぇこって…」の紋次郎がめちゃくちゃ他人に関わっているじゃないかと。

それもそのはず、今作は紋次郎がなぜ「あっしには~…」と口にするようになったかを描く前日譚だ。

 

紋次郎が島に送られてからが今作の見どころ。島での厳しい生活を送る紋次郎。ある日左文治の裏切りを知った紋次郎は島抜けを計画していた4人の流人の仲間に加わる。この4人のがとにかく強烈で強烈で…。伊吹吾郎、山本麟一、渡瀬恒彦賀川雪絵の4人。これに菅原文太も加わるんだからとにかく画面から伝わる圧が凄い。一言でいえばヤクザ阿部定。山本麟一はいつも上裸で肉体美を見せびらかし渡瀬恒彦相変わらずの狂いっぷり

 こんな5人が小舟を奪って島から逃げるのだが、このメンツでひとつ小舟の上、もはや何も起きないほうがおかしい。さらに拍車をかけるのが自然の猛威。これほど強烈な脂ぎったメンツでも大自然のエネルギーにはかなわない。船上のサバイバルは今作屈指の見せ場だ。

 

命からがら浜辺に打ち上げられた紋次郎は左文治の裏切りが真かどうか確かめに行く。しかしそこに待ち受けていたのは左文治の裏切りともうひとつの残酷な裏切りだった。

 

すべてにケリをつけて紋次郎はとうとうあのセリフを口にする。

ドラマ版で聞きなれたセリフが今作では最後の最後の決め台詞として使われる。そのあまりの決まり具合は最高に気持ちいいし鳥肌ものだ。

 

上の今作の説明に痛快娯楽作とあるけど、これはおかしい。ひたすら紋次郎がひどい目にあう話なんだから。

こんな目にあったらそりゃ紋次郎でなくても「あっしには…」って言いたくなる…

 

 

今作はamazon、U-NEXTでも見られますよ~