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『闇の歯車』(主演:瑛太) 「闇の歯車」新旧2作を見ての感想

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2019年1月19日 公開

2019年2月24日 放送

配給

東映ビデオ

原作

藤沢周平

監督

山下智彦

脚本

杉田成道

キャスト

瑛太橋爪功緒形直人大地康雄中村蒼中村嘉葎雄ほか

 

 

内容紹介

時代劇専門チャンネルの開局20周年記念作品として、藤沢周平作品としては珍しいサスペンス時代小説を瑛太橋爪功の共演で映像化。初秋の江戸・深川。闇の世界に生きる佐之助は、行きつけの酒亭おかめで出会った謎の男・伊兵衛から儲け話を持ちかけられるが、危険な匂いを感じ、その時は誘いを断った。しかし、おくみという女と暮らすこととなり、女との未来にわずかながらの希望を抱く佐之助は、伊兵衛の誘いに乗ることに。伊兵衛の儲け話に乗ったのは、浪人、若旦那、白髪の老人、そして佐之助。いつもおかめで顔を合わしながら、一度も口を聞いたこともない男たち。押し込みなどしたことがない4人の素人が、伊兵衛の手引きにより、ある商家に眠る七百両を狙うが……。監督は「鬼平犯科帳 THE FINAL」「三屋清左衛門残日録」シリーズを手がける山下智彦。2019年2月の時代劇専門チャンネルでの放送に先がけ、期間限定で劇場上映。(映画.comより)

 

 

感想

時代劇専門チャンネル放送前に丸の内TOEIにて観た今作。昔のテレビドラマ版を最近観ることができたので両作見た上での今作の特徴について書いていく。

キーワードはサスペンス、ノワール、ケイパーものだ。

 

ストーリーは内容紹介に書いてあるとおりドラマ版と大差ないが主人公が瑛太演じる佐之助となっている。

前作での特徴でも述べたが同じ原作である両作の雰囲気を異にしている最大の特徴は盗人伊兵衛のキャラクターの描かれ方だ。

昔のドラマでは伊兵衛を含めた押し込み強盗をおこなう5人の男たちの人間模様がそれぞれの視点から描かれていた。つまり盗みに巻き込む側と巻き込まれる側、両方の内面が細やかに描かれた人間ドラマだった。

 

ところが今作では盗みに巻き込まれる側の事情は描かれるが、巻き込む側の橋爪功演じる伊兵衛の内面や背景はほとんど描かれない。

穏やかそうな笑みを常に浮かべ、甘い言葉で酒屋で顔を合わせる4人の男たちを危険な仕事へといざなっていく。眼光の鋭さや言葉の端々から有無を言わせぬ凄みを時々感じさせる。何を考えているのか分からない狡猾で不気味な得体の知れない男としての伊兵衛が一貫して描かれている。

伊兵衛のメフィストフェレスのようなキャラクターのおかげで今作はサスペンス、ノワール色が強く、緊張感のあるドラマが展開される。

 

また今作は犯罪ものの1ジャンルである強盗もの、いわゆるケイパーものの印象が強い。例えば伊兵衛が仕事仲間を集めるシーン。伊兵衛はなぜこの4人の男を選んだのか。闇の世界で仕事をする伊之助は度胸、浪人(緒形直人)は腕っぷし、若旦那(中村蒼)は夜目が利く、老人(大地康雄)は手先が器用で錠破りができるなどそれぞれの特技が何気なしに映像で語られる。伊兵衛が足がつきにくいということ以外で盗みの素人を仲間にする理由がしっかり描かれている。

こうした1つ1つのシーンが作品のリアリティと緊張感をより高めてくれる。

 

人間模様をしっかり描きつつも情緒だけに帰結しないサスペンス、ノワール色の強い刺激的な魅力にあふれた時代劇だ。

 

他にも気だるげで冷たそうだが不器用な優しさを持ち、暴力を生業にしながらも殺しという一線を越えないよう踏みとどまっている伊之助という男を危うい雰囲気と色気たっぷりに演じている主演の瑛太が素晴らしいとか、ケイパーものによくある破滅へとむかう皮肉なドラマに意外性があるとか、提灯に群がるヤモリが男たちを意味してるようで不気味とか好きなところは沢山ある。

 

時代劇専門チャンネルでまた放送されると思うので気になった人はそちらで見てみるといいと思います。